ヘルニアについて

疾患・治療

I. 鼠径部ヘルニア

1.特徴

鼠径部ヘルニアは年間約15万人が治療を受けられる非常に一般的な疾患です。

身体構造上、男性に4~5倍起こりやすいとされています。鼠径管といって胎生期に精巣が下降する部分が関与しています。

コラーゲン代謝異常により組織の脆弱化が起こることが原因と考えられていますが、実際の原因は不明です。

一度生じると自然治癒することはなく、治療の原則は手術が必要となります(他の治療法はありません)。

2.種類

鼠径部にできる代表的なヘルニアには以下があります。

1) 外鼠径(間接)ヘルニア:下腹壁血管の外側から脱出

2) 内鼠径(直接)ヘルニア:下腹壁血管の内側から脱出

3) 大腿ヘルニア:大腿血管傍(大腿輪)から脱出

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3.主な症状

立ったり、おなかに力を入れた際に、足の付け根(鼠径部)の皮膚の下に腹膜とともに腸の一部などの内臓が出てきて(脱出)、やわらかい膨らみとして触れます(膨隆)。通常は仰向けで寝ている時や指で押し込むと引っ込みますが、次第に大きくなったり、痛みや不快感を伴うようになってきます。時に『ヘルニア嵌頓』といって、突然脱出した腸が嵌まり込んで元に戻らなくなり、やわらかかった膨らみが急に硬く疝痛を伴うことがあります。比較的低頻度ではありますが、時間経過ともに腸管壊死や腹膜炎を生じる危険性があり、緊急手術を要する場合もあります。

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4. 診断・検査

基本的には身体診察(視診・触診)で診断されます。

症例によっては、各種画像検査(腹部超音波検査、CT検査、MRI検査)を行う場合があります。

5.治療

治療は原則手術となります。

1) 手術方法は大きく分けて2つの方法があります。

① 従来法(組織縫合法)

脆弱化した筋膜を縫合することで修復する従来の方法です。

ただし、高い再発率が問題となっており、現在では限られた症例にのみ行われるのが一般的です。

②テンションフリー法

メッシュ(人工補強材)を用いた修復法です。

従来法に比べて再発率が低いため、現在の標準治療となっています。

2) アプローチ方法には2つあります。

① 鼠径部切開法

患側の足の付け根を4~5cm横切開して行う方法です。

② 腹腔鏡法

お臍に5~10mm(カメラポート),左右側腹部に5mmの小さい傷で行う手術方法です。

一般的に疼痛が少なく、術後の回復が早いとされておりますが、鉗子器具を使った手術になるため、一定の技術が必要となります。

当院では2008年に鼠径ヘルニアに対する術式の定型化を行い、2013年4月以降は腹腔鏡手術を導入し、第一選択として積極的に治療を行っています。日本内視鏡外科学会技術認定医(ヘルニア)2名を中心に診療にあたっています。当院では、以下のグラフのように年間約120症例(140病変)の手術を行っています。

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③治療法の選択手順

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注)患者様毎の最適な治療法『オーダーメイド医療』がConceptです。なかには上記以外の治療方針となる得る場合もあります。

④ 腹腔鏡手術の特徴

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5.受診からの流れ

1) 初診(紹介) 

問診および身体診察で診断を行います。 

症例に応じ、各種画像検査(エコー,CT,MRIなど)を行います。           

病状の説明を行い、ご納得いただいた上で、手術を行うための検査日、手術日等を決めます。

2) 再診 

行った検査結果を説明します。

問題なければ、手術の詳細な説明を行います。

3) 入院 

基本的には手術前日の入院となります。

※抗血栓薬を内服されている方は異なる場合があります。 

4) 手術 

 

5) 退院 

順調に経過すれば、手術翌日あるいは翌々日に退院となります。

 

6) 術後フォローアップ

慢性疼痛や再発が問題となってきます。

問診票を用いて、術後1週間、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後と定期的に診察を行っています。

術前、手術だけでなく、術後も安心して相談いただけます。

II その他のヘルニア

以下のヘルニアに対しても、積極的に治療を行っており、鼠径ヘルニアと同様に腹腔鏡手術を行っております。

1. 再発ヘルニア

2. 閉鎖孔ヘルニア

3. 腹壁瘢痕ヘルニア

4. 臍ヘルニア