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昭和大学藤が丘病院消化器・一般外科

胆嚢疾患について

疾患・治療

I. 胆石(慢性胆石性胆嚢炎・急性胆石性胆嚢炎)

胆石とは、胆嚢や胆管にできる結石(石)の事です。 石のできる場所によって、胆嚢結石、総胆管結石、肝内結石に分類され、それぞれ症状、治療法が異なります。胆嚢結石は胆石の約80%と最も多く、一般的に胆石といえば胆嚢結石のことを指します。

1. 胆石の原因

胆石は、「コレステロール結石」と「色素結石」の2種類に分類されます。最も多いのはコレステロール結石で、胆汁中のコレステロールの量が増えると、余分なコレステロールが溶けずに結晶化して、これを核にして結石ができます。胆汁中のコレステロールが増える原因としては、カロリーの高い食事、肥満、脂質異常症、糖尿病、妊娠、急激なダイエットなどがあります。

色素結石にはビリルビンカルシウム石と黒色石があります。ビリルビンカルシウム結石は、大腸菌などの細菌感染が原因といわれています。黒色石の成分はビリルビンと重金属で、溶血性貧血や肝硬変、クローン病などの患者さんで多く見られます。

2. 胆石の症状

胆嚢に結石があっても多くの場合は無症状で、症状が出るのは胆嚢結石をもっている方の20%程度といわれています。胆嚢結石に特徴的な症状は右季肋部痛です。人によってはみぞおちや背中など、一見胆嚢とは違う場所も痛がったりします。これは胆嚢結石が胆嚢の出入り口をふさいで、胆汁の流れを妨げることにより起きるとされています。その状態で胆嚢内に細菌が感染すると、高熱が出て、急性胆嚢炎という状態になり、早期の治療が必要になります。

3. 胆石の診断

無症状の胆嚢結石では血液検査で異常を認めません。胆嚢結石の診断に最も簡便かつ確実なのは腹部超音波検査(エコー検査)です。CT検査、MRCP(MRIを用いて胆嚢・胆管・膵管を撮影する検査)、超音波内視鏡検査(EUS)も胆嚢結石の診断に有用です。

4. 胆石の治療

胆石が原因で、急性炎症、腹痛をはじめとする症状が1度でもあった人は、治療をお勧めします。検診などで胆石症を指摘される方は多いと思いますが、症状がない場合は経過を見ていただいて結構です。

胆石が原因で、急性胆管炎、急性胆嚢炎を発症することがあります。急性期に適切な対処が必要で、特に重症感 染症の場合には、急性期に適切な診療が行われないと死亡に至ることもあります。

胆石が原因で慢性炎症を起こし、腹痛や消化不良などの症状を起こすことがあります(慢性胆嚢炎)。その他、慢性胆嚢炎、特に陶磁器様胆嚢炎といわれるように悪性腫瘍との鑑別が難しい場合もあります。

胆石症、胆嚢炎は、よくある病気ですが、胆嚢に異常を認めた場合は、一度、専門医を受診していただくことをお勧めします。

1) 治療が必要な胆石

  • 急性胆嚢炎や胆石発作を起こしたことがある人

  • 慢性胆嚢炎、特に「陶磁器様胆嚢」といわれるように悪性腫瘍との鑑別が難しい場合

  • 総胆管結石といわれたことがある人
    特に、総胆管結石が原因で膵炎・胆管炎を起こしたことがある人(胆石性膵炎など)

  • 肝内結石症

  • 胆石が原因と考えられる症状を認める人

2) 胆嚢結石症に対する治療

① 抗菌薬投与

② 外科治療(手術)  胆嚢摘出術

③ 内科的な治療法   胆嚢ドレナージ術

3) 総胆管結石に対する治療

① 内科治療の後、胆嚢摘出術

② 外科手術による総胆管結石砕石術

 

4) 胆嚢結石症に対する手術

胆嚢摘出手術(腹腔鏡手術・開腹術)

全身麻酔で胆のうを体外に取り出す手術です。「腹腔鏡(お腹の中に入れるカメラ)」を使って胆嚢を摘出する方法が最もよく行われています。

胆嚢を取ってしまった後の生活に不安を感じる患者さんもいます。しかし、胆嚢を摘出しても、肝臓や胆管が胆のうの代役を果たすようになるため、日本人の食生活では、生活にほぼ支障は出ないことがわかっています。

① 腹腔鏡下胆嚢摘出術

腹部に5-10mm程度の小さな孔を4ヶ所開け、専用の腹腔鏡(カメラ)と手術器具を入れて、腹腔鏡のモニターを見ながら、腹腔内で胆嚢を切り離し、体外に取り出す方法です。

従来の方法より傷が小さいので、患者さんの身体的負担が少ないのが利点です。術後の痛みも少なく、胆嚢結石の治療として最も広く行われています。

手術翌日から歩行や軽い食事ができて、入院期間は5日程度で、以前の開腹手術に比べて短期間ですみます。

実際の傷口は病状により多少場所が異なります場合があります。また、腹腔内部の炎症の程度によっては、手術中に開腹術に移行する可能性や、術後にドレーンと呼ばれるドレナージチューブを留置する場合もあります。

② 開腹胆嚢摘出手術

開腹して胆嚢を取り出す方法です。胆嚢周囲の炎症や癒着が強いときや、腹膜炎を起こしているときに行われます。また、以前に開腹手術を受けたことがある患者さんの場合、腹腔内の臓器が癒着していることがあり、開腹手術になることがあります。

入院期間は腹腔鏡手術とほぼ同様か、数日長い場合があります。

II. 胆嚢ポリープ

胆嚢ポリープとは胆嚢の内面に出来る、限局した隆起病変の総称です。

基本的には良性のものがほとんどで長期間に渡っておとなしい病気です。しかし、胆嚢ポリープの中には悪性のもの(=胆嚢癌)が存在することがあり、胆嚢ポリープと診断された場合は、専門の施設で精密検査を受けていただくことをお勧めします。

1. ポリープの種類

大きく分けて、以下の5つの種類があります。胆嚢ポリープの診断は、最終的には手術で胆嚢を切除し、病理検査にて確定します。

1) コレステロールポリープ

胆嚢ポリープの中で約90%を占める、最も多い種類です。胆嚢の中に多発しやすいことが特徴です。多くは数mm以内のものが多く、10mm超えることは稀です。良性のものです。

2) 腺腫性ポリープ

基本的には良性と考えられていますが、一部に胆嚢癌の発生源になる関係性が報告されています。

 

3) 過形成ポリープ

胆嚢の粘膜表面の細胞が過剰に増殖したタイプです。

 

4) 炎症性ポリープ

慢性胆嚢炎を起こした患者さんなどに起こる、粘膜細胞の増殖が原因で発生するタイプです。良性のものです。

 

5) 胆嚢癌

文字通り胆嚢の粘膜に出来る悪性腫瘍です。ポリープの段階で見つかる胆嚢癌は比較的早期の病変が多く、適切な治療により根治的治療を行うことが可能です。

(*) 進行胆嚢癌については、「胆嚢癌について」をご参照ください。

2. 胆嚢ポリープの症状、および検査
ポリープだけであれば症状はほとんどありません。健診の超音波検査で偶然発見されることがほとんどで、他には胆石や胆嚢炎を患った場合に同時に発見される場合があります。

1) 血液検査
肝機能・胆道系酵素の異常や腫瘍マーカーのチェックを行います。しかし、あくまで確定診断や除外診断ができる検査ではなく、補助検査という捉え方になります。


2) 腹部超音波検査
体外から超音波を使った器械を当て、胆嚢の病変を検査します。胆嚢ポリープの検査で最も行うことが多く、患者さんの体への負担も軽いものであります。

3) 超音波内視鏡検査
胃カメラの先端に特殊な超音波検査機器が接続された検査です。体表からの検査に比べ、より胆嚢に近い場所から検査を行うことで、詳細な情報が得られます。

4) 造影CT検査、MRI検査
造影剤を注射し、CT・MRI検査を行います。
胆嚢ポリープの形・大きさと同時に胆嚢癌が考えられた場合の手術に際して、リンパ節への転移の可能性を検索したり、周囲の血管などの構造をチェックするのにも重要です。


5) 内視鏡的逆行性胆道造影検査
十二指腸まで内視鏡を入れて、胆管から胆嚢に管を挿入し、細胞を取ったり(細胞診検査)、造影剤を入れてレントゲン検査を行ったりします。細胞診検査は手術で胆のうをとって診断する以外に胆嚢ポリープを「癌」と診断できる唯一の検査方法です。

3. 胆嚢ポリープの治療

胆嚢ポリープの治療では、胃や大腸のポリープの様に「カメラでポリープだけを取る」というわけにいきません。そのため、胆嚢摘出手術を行うことになります。

胆嚢ポリープと診断された段階で、全ての方が治療(手術)する必要はありません。しかし、ポリープが大きくなってこないか、形性状に変化がないか、超音波検査やCT検査などで定期的に検査を行う必要があります。治療の対象となるのは、以下のように胆嚢癌の存在する可能性があるものになります

1) 胆嚢ポリープの治療が必要な方

① 胆嚢ポリープが10mm以上

② 経過観察の検査で大きくなってきている

③ 大きさに関わらずポリープの茎が幅広いもの

④ 超音波検査で癌が疑われる所見がある場合

(*) その他、血液検査で腫瘍マーカー(CA19-9, CEA, DUPAN-2, SPAN-1など)、PDG-PET検査、細胞診などで悪性の可能性が否定できない場合は、手術をお勧めします。

2) 手術の方法

胆嚢摘出手術の方法には、腹腔鏡下胆嚢摘出術と開腹胆嚢摘出術があります(詳細は「胆石とは」を参照して下さい)。

胆嚢ポリープで胆嚢癌の可能性が少ない場合は、腹腔鏡下胆のう摘出術を行います。ポリープの場所によりますが、肝臓に近い場合は、胆嚢の組織をすべて切除する全層切除を行います。術中、明らかな浸潤の所見を認めた場合には、開腹手術に変更する場合があります。

胆嚢癌の可能性が高いと判断した場合、開腹での拡大胆嚢摘出術を行います。胆嚢と胆嚢付着部の肝臓、そして転移を起こしうる周囲のリンパ節(肝門部リンパ節)を同時に切除して、病変を取りきる手術を行います。

手術で摘出した胆嚢は病理検査に提出します。病理検査結果が判明し次第、その結果の説明と、今後の治療方針の相談を行うことになります。

III. 胆嚢癌

胆嚢癌に関しては、本ホームページ内の肝臓・胆道・膵臓の疾患の胆管癌の項目にも記載しておりますが、

肝臓で分泌された胆汁を一時貯留しておく胆嚢にできるがんを胆嚢がんといいます。年齢は60歳台が最も多く、やや女性に多いがんです。胆石症に胆嚢がんが合併する頻度は約1%と低率ですが、高齢者ではもっと頻度が高くなります。膵管胆管合流異常に合併する胆嚢がんは20-30%みられます。

1. 胆嚢癌の症状

健康診断などの腹部超音波検査で、胆嚢に腫瘍様病変が発見される機会が増加しています。胆嚢の腫瘍様病変には胆嚢がん以外にも腺腫や各種ポリープなどの良性病変が数多くみられますが、悪性か良性かは専門医による確実な診断と治療を受けることが大切です。

基本的に胆嚢癌の初期は無症状な事が多いです。進行してはじめて腹痛、発熱、黄疸などが生じます。胆石の合併が多いことから胆石症の症状が前面にでて診断されることもよくあります。癌が進行すると胆汁の通路である胆管を閉塞し皮膚が黄色くなる黄疸症状がみられることがあります。

2. 胆嚢癌の診断、検査

診断は超音波検査が第一選択となります。その他にも採血検査にて生化学検査、腫瘍マーカーなどを調べます。しかし、あくまで確定診断や除外診断ができる検査ではなく、補助検査という捉え方になります。また、精査のための画像診断として、超音波内視鏡検査、内視鏡的逆行性胆道造影、経皮経肝胆道造影、CT、MRIなどを行います。

1) 腹部超音波検査

体外から超音波を使った器械を当て、胆嚢の病変を検査します。胆嚢腫瘍性病変の検査で最も行うことが多く、患者さんの体への負担も軽いものであります。

2) 超音波内視鏡検査

胃カメラの先端に特殊な超音波検査機器が接続された検査です。体表からの検査に比べ、より胆嚢に近い場所から検査を行うことで、詳細な情報が得られます。

 

3) 造影CT検査、MRI検査

造影剤を注射し、CTやMRI検査を行います。

胆嚢腫瘍性病変の形・大きさと同時に胆嚢癌が考えられた場合の手術に際して、リンパ節への転移の可能性を検索したり、周囲の血管などの構造をチェックするのにも重要です。

 

4) 内視鏡的逆行性胆道造影検査

十二指腸まで内視鏡を入れて、胆管から胆のうに管を挿入し、細胞を取ったり(細胞診検査)、造影剤を入れてレントゲン検査を行ったりします。細胞診検査は手術で胆のうをとって診断する以外に胆嚢腫瘍性病変を「癌」と診断できる唯一の検査方法です。

 

5) 経皮経肝胆道造影

腫瘍などが原因で胆管に閉塞をきたしてしまった場合など、内視鏡的に胆管へのアプローチが困難な場合に、胆汁の通り道である胆道を詳しく調べる検査です。この検査でも細胞診検査が可能ですので、胆嚢腫瘍性病変を「癌」と診断できる手段の一つとなります。

3. 胆嚢癌の治療

治療は、切除可能であれば、外科的手術が最善です。手術法は癌の進展度に従って変わります。がん進展が固有筋層までのものでは、胆嚢摘出術と肝床部の肝部分切除、および領域リンパ節郭清でよいとする意見が多いのですが、これ以上の進展度のものでは、胆嚢を中心にしてさらに広い範囲の切除と郭清が必要と考えられております。

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